厚生労働省の調査によると、日本で働く外国人労働者の数が増加しており、2021年10月末時点で1,727,221人に達しています。増加する外国人労働者の中で、労働災害も年々増加しており、2021年には5,715件の労働災害が発生しています。労働安全衛生法などの関係法令が外国人労働者にも適用され、これまで日本人労働者に対して行われてきた労働災害防止対策が必要となります。
外国人労働者に対して、職場での安全衛生に関する教育を実施することが求められます。
具体的には、労働災害防止のための指導や、使用する機械や原材料の危険性・有害性、取り扱い方法の指導が含まれます。
その際には、外国人労働者が理解できる言語や視覚教材を用いるなど、十分に理解できるように配慮することが必要です。
外国人労働者を雇用する場合や作業内容が変わる場合には、「安全衛生教育」が必要です。
ただ口頭で説明するだけではなく、外国人が理解できる言葉で書かれたマニュアルを用意することが望ましいでしょう。
「外国語でのマニュアル作成は難しい」という場合には、厚生労働省が提供する「マンガでわかる働く人の安全と健康(教育用教材)」を活用することもできます。
この教材には、ケガをしやすい状況や注意すべき点がマンガで分かりやすく説明されています。18種類の教材が用意されており、日本語だけでなくベトナム語、ミャンマー語など11~14ヶ国語に対応し、8業種と業種共通の教材が準備されています。
また、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、動画による「安全衛生教材」が多言語で提供されていますので、ぜひ活用してください。
外国人労働者は、日本語でのコミュニケーションが上手くいかないことが多いため、現場で頻繁に使用する専門用語をきちんと教える必要があります。
さらに、外国人労働者の母国によって文化が異なるため、日本人労働者が当然だと思っているルールが、外国人労働者にとって当然でない場合があることに注意が必要です。
そのため、外国人労働者が危険な行動をしていないかを確認することが、日常的に必要になります。
作業指示の際には、現場で作業状況を確認しながら行うのが良いでしょう。
また、「どのような危険があるか」に焦点を合わせて説明し、相手が理解しているかを確認することが大切です。
特に、リスクの高い作業については、何度も丁寧に指導するようにしましょう。
労働災害防止のための指示を正確に理解できるよう、必要に応じて現場での日本語教育を実施することが求められます。また、特定の指示を意味する合図やジェスチャーなども用いて、外国人労働者がより正確に理解できるように工夫することも重要です。
外国人労働者とのコミュニケーションが難しい場合、緊急時に必要となる「危ない」「逃げろ」などの言葉は、最初にしっかりと覚えてもらうようにしましょう。
安全教育資料を作成する際には、写真やイラストを多用し、禁止行為などを「×」で表記して、誤解が生じないよう説明すると伝わりやすくなります。
作成した安全教育資料に関しては、危険情報を共有し、他の部署の管理者にメールなどで情報を伝えましょう。
外国人労働者の日本語能力向上のためには、普段からしっかりとコミュニケーションをとることが大切です。
職場や作業場所において、外国人労働者が正確に理解できるように、労災防止に関する標識や掲示を図解などを用いて表示することが求められます。
また可能な限り、外国人労働者の母国語や理解できる言語を併記するなどの工夫が必要です。
外国人労働者に対して、定期的な健康診断や面接指導、心理的な負担の程度を把握するための検査を実施することが求められます。
実施に当たっては、外国人労働者の母国語や理解できる言語、簡単な日本語による説明が必要です。
また、結果に基づく事後措置の説明も同様に行う必要があります。
外国人労働者に対して、産業医や衛生管理者などを活用して、定期的な健康指導や健康相談を行うことが推奨されます。
その際には、外国人労働者が理解できる言語での指導が必要であり、健康管理に必要な情報を提供するとともに、必要に応じて医療機関や専門家への紹介も行います。
外国人労働者の女性が妊娠中または出産後である場合には、労働法令に基づき、妊娠・出産に関する特別の休暇や労働時間の短縮などの措置が求められます。
また、妊娠中や出産後の健康管理に関する措置も必要です。
これらの措置を適切に実施し、母性保護を確保することが求められます。
さらに、授乳室の設置や授乳時間の確保などの措置も必要です。
労働安全衛生法に関しては、まずは労働者が法令を理解できるよう、外国人労働者の母国語や理解できる言語、または簡単な日本語で説明することが重要です。
具体的には、要約資料やグラフィックス、ビデオ、オーディオ教材を用いて理解を促します。
また、定期的な研修も行い、外国人労働者が労働安全衛生法について深く理解できるように支援することが求められます。
さらに、労働安全衛生法に基づいた職場の安全衛生環境の整備や、職場における安全衛生委員会の設置も必要です。