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ハラスメント対策でトラブルの未然防止

ハラスメント問題が社会的に注目され、企業にとっても重要な課題となっています。

ハラスメントによって、従業員本人の健康や生産性に悪影響が及ぶだけでなく、企業自体にも業績低下や法的トラブルなどの深刻な影響を及ぼすことがあります。

令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は他の相談内容と比較すると圧倒的に多く、ハラスメント対策が急務であることがうかがえます。

グラフ

 

 

引用/「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況

 

パワハラの判断基準

「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」によると、職場におけるパワハラとは次の3つの条件を満たすとパワハラになります。


●職場において行われる優越的な関係を背景とした言動

●業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

●労働者の就業環境が害されるもの


 

職場において行われる優越的な関係を背景とした言動とは

「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動」とは、労働者が当該言動に対して抵抗や拒絶を行いにくい関係にある行為者から受ける言動のことを指します。

上司から部下への言動に限らず、知識や経験が豊富な部下からの言動や同僚間の集団行動などでも発生する可能性があります。職務上の地位に関わらず、優越的な関係を背景とした言動が該当する可能性があります。

 

業務上必要かつ相当な範囲を超えたものとは

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」とは、社会の通念に照らして、明らかに企業の業務に必要性がなく、またはその態様が相当でない言動を指し、例えば精神攻撃や人格否定を内容とする言動や他の労働者を見せしめる意図がある言動などが該当します。

 

労働者の就業環境が害されるものとは

「労働者の就業環境が害される言動」とは、その言動によって労働者が身体的または精神的に苦痛を受け、労働者の就業環境が不快な状態となり、能力の発揮に重大な悪影響があるなど、労働者が就業上で重大な支障を受ける程度に影響を与えることを指します。

「労働者の就業環境が害される言動」の判断には、「一般的な労働者の感じ方」が基準とされ、例えばその言動によって労働者が業務を円滑に遂行できなくなるような場合など、一般的な労働者が就業上で重大な支障を受けると感じるような言動であるかどうかが基準とされます。

 

雇用管理上必要な措置

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(通称「労働施策総合推進法」または「パワハラ防止法」)に基づき、パワハラの防止を目的として、企業には雇用管理上必要な措置を講じる義務が課せられる改正法が2019年6月に成立し、大企業においては2020年6月から、中小企業においては2022年4月から施行されています。

事業主が雇用管理上講ずべき措置としては、次の4つが挙げられます。


●事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
●相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
●職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
●上記に併せて講ずべき措置


 

事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

職場におけるパワーハラスメントに関する内容や、パワーハラスメントの禁止方針を事業主が明確にし、労働者に周知する必要があります。さらに、行為者に対して厳正に対処する方針や対処内容を就業規則などに規定し、労働者に周知・啓発することも重要です。

 

相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

パワーハラスメントに関する相談窓口を設置し、労働者に周知する必要があります。相談窓口は社内に設けるだけでなく、社外にも設置することができます。社内の相談窓口を設ける場合は、適切な対応ができるように担当者の体制を整備する必要があります。研修を行い、相談に対する対応方法や留意点などをマニュアルにまとめるなど、準備を整えましょう。

 

職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

パワーハラスメントの相談が寄せられた場合、事業主は事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者に対する配慮のための措置を迅速に行うとともに、行為者に対して適切な措置を取らなければなりません。さらに、再発を防止するための措置も必要です。

 

併せて講ずべき措置

相談者や行為者のプライバシーを保護するために必要な対策を実施し、相談したことを理由に解雇や不利益な扱いをしない旨を明確に定め、労働者に周知する必要があります。

 

ハラスメント防止の有効な対策

明確な方針を策定し、社内に周知する

ハラスメントの防止に向けて、企業は具体的な方針を策定し、全従業員に周知させることが重要です。

経営者は、ハラスメント防止の重要性を認識し、そのメッセージを外部に向けても発信するべきです。具体的なハラスメント防止の取り組みや、従業員への支援体制などを公に示すことで、企業の姿勢を明確に伝えることができます。

さらに、企業はハラスメント防止の方針を社内で明文化し、従業員に周知させる必要があります。これは、社内規定や就業規則の中に明確に記載することで実現できます。具体的なハラスメントの定義や禁止行為、報告手続きなどを明確に示し、従業員が適切な行動を取るためのガイドラインを提供することが重要です。

明確なハラスメント防止の方針と社内での周知により、会社として「ハラスメントは許さない」という姿勢を従業員に伝えることが重要です。従業員はハラスメントに対して敏感になり、早期に報告や相談をする意識が高まります。結果として、職場のハラスメントの予防と解決につながるでしょう。

 

ハラスメント行為への対処規定の設置

ハラスメントの予防には、ハラスメントが発生した場合に備えて適切な対処方法を整備することも重要です。

就業規則などにおいて、ハラスメントの定義を明確にし、処罰措置に関する規定を設けましょう。ハラスメント行為の対象となる行為や処罰の内容について具体的に規定することで、企業がハラスメントに対して明確なルールを設けていることを示すことができます。また、従業員に対しては、研修などを通じてハラスメントに関するルールや処理手続きを周知することも重要です。

 

アンケート調査などによる実態把握の重要性

ハラスメント防止のためには、アンケート調査などを通じて実態を把握することが重要です。方針の明確化やルールの整備だけでなく、職場環境の整備もハラスメント防止の重要な取り組みとなります。

従業員の人間関係の衝突やストレスの兆候、メンタルヘルスの不調など、異変が見られる場合は、ハラスメントの背景に何らかの問題が潜んでいる可能性があります。そのため、アンケート調査などを通じて実態を把握し、具体的な改善策につなげることが重要です。

アンケート結果を集計・分析し、問題の根本原因を特定することで、適切な対応策を講じることができます。従業員の声に耳を傾け、職場環境の改善や労働条件の見直しを行うことで、ハラスメントの予防に努めましょう。

アンケート調査などによる実態把握は、ハラスメント防止において欠かせない手段です。従業員の意見を尊重し、職場の健全な環境を実現するために積極的に取り組みましょう。

 

ハラスメント防止のための研修を実施する

ハラスメントを防止するためには、定期的な研修の実施が重要です。研修を通じて、ハラスメントの定義やその具体的な行為について理解を深めることで、日常の言動がハラスメントに該当しないかを自己反省することができます。また、適切なマネジメントスキルを身につけることも期待できます。

ハラスメント防止研修では、具体的な事例やケーススタディを取り上げ、従業員がハラスメントの実態や影響を理解し、その重要性について共有することが目的です。また、ハラスメントを回避するコミュニケーションやリーダーシップのスキルを身につけるためのトレーニングも行ないます。

定期的な研修の実施により、従業員全体の意識向上や職場文化の改善が図られます。ハラスメント防止の重要性を徹底的に啓発し、全ての従業員が健全な職場環境を共有することで、ハラスメントの発生を未然に防ぐことができるでしょう。

 

相談窓口の設置を検討する

ハラスメントに関する相談窓口の設置は、事業主の法的な義務とされています。

相談窓口を設けるだけでなく、相談内容の機密保持や、迅速な事実確認など、適切な運営が求められます。相談窓口の運用ルールを明確に定めることや、担当者に対して必要な研修を提供することが重要です。

相談窓口は、従業員が安心して相談できる場であることが求められます。従業員がハラスメントに遭ったり、目撃したりした場合に、気軽に相談できる仕組みを整えることが必要です。相談窓口の設置にあたっては、窓口の場所や連絡手段を明確にし、アクセスしやすくすることも重要です。

また、相談窓口の運用においては、相談内容の取り扱いに慎重さが求められます。相談者のプライバシーを尊重し、守秘義務を厳守することは当然のことです。さらに、相談内容に対して適切な対応や調査を行い、迅速かつ公正な対処を心掛ける必要があります。

相談窓口の設置は、ハラスメントの早期発見や解決に向けた重要な手段となります。従業員が安心して相談できる環境を整えることで、職場全体の信頼や安定を築くことができます。ハラスメント防止のために、相談窓口の設置を積極的に検討しましょう。

 


ハラスメント問題は企業にとってリスクマネジメントの重要なテーマです。

ハラスメントが発生すると、労働者のメンタルヘルスや生産性が低下し、連鎖的な離職につながったり、法的なトラブルなどのリスクが生じます。

適切なハラスメント対策で、良好な職場環境の構築につなげましょう。