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トラブルを引き起こさない労働条件の不利益変更の手順

近年のビジネス環境において、企業の労務管理は絶えず変化を求められています。

そのため、労働条件の見直しを余儀なくされる場合もあり、労働者にとって利益のある労働条件の変更であれば問題はないのですが、労働者にとって不利益な変更となると慎重に手続きを進めなければなりません。

労働条件は、原則として会社と従業員の間の「合意」によって決定されます。

そのため、労働条件を変更する場合は、従業員の一人ひとりに説明をし変更の合意を得ることが原則となります。

但し例外として、就業規則を変更することによって、従業員からの同意を得ることなく労働条件の不利益変更を行うことができます。

個別に合意を得ることは難しい現状があるため、就業規則を変更することで労働条件の不利益変更を行うことが一般的ですが、就業規則での不利益変更が認められるためには、変更後の内容に合理性が認められなければなりません。

トラブルを引き起こさない労働条件の不利益変更の手順

 

就業規則による不利益変更

就業規則による不利益変更は、従業員個人との合意を得ることが難しい場合に利用されますが、合理性が求められます。

例えば、業務の需要や経営状況が変化し労働条件の変更が必要になった場合には、就業規則による不利益変更が許容されます。ただし、その変更内容が合理的であることが必要です。

合理性の判断基準としては、変更内容が目的達成のために必要不可欠であること、変更内容が不利益であっても変更することの利益がより大きいこと、従業員への配慮が適切であることなどがあります。

さらに、就業規則による不利益変更を行う場合には、変更内容の詳細な説明や従業員との十分な協議を行うことが必要です。また、従業員への周知や交付も重要であり、その方法としては、説明会や書面による通知が挙げられます。

以上のように、就業規則による不利益変更が認められるためには合理性が求められます。企業としては、変更が必要になった場合には、従業員との十分な協議を行い、合理性を判断してから変更を行うことが重要です。

 

変更後の内容に合理性が認められる基準

就業規則による不利益変更後の内容に合理性が認められるためには、以下の基準が挙げられます。

変更の必要性が高いこと

就業規則の変更によって、企業の経営状況が改善されることが合理性の一つとされます。例えば、人件費削減のために勤務時間短縮や賃金削減が行われる場合、企業の経営状況を健全に保つために必要な措置として認められます。

■社会的に合理性があること

就業規則の変更が社会的に合理的であることが求められます。

例えば、市場の変化や競合環境の変化に対応して、業務内容や勤務時間の変更が必要になった場合、社会的合理性を考慮した上での変更であれば合理的と認められます。

■労働者と企業のバランスがとれていること

就業規則の変更によって、労働者と企業のバランスが取れていることが合理性の一つとされます。

例えば、労働者にとって不利益な変更が行われた場合でも、その変更によって企業が存続し、労働者が雇用を維持できる場合は合理的と認められます。

■合意形成のプロセスが適切であること

就業規則での変更に際しては、労働者との合意形成のプロセスが適切に行われていることが求められます。

例えば、十分な説明や協議を経た上での変更であれば、労働者に対する配慮が行われていると認められます。

 

以上のように、就業規則による不利益変更後の内容に合理性が認められるためには、上記の基準に照らして変更内容が合理的かどうかが判断されます。

 

周知を徹底

就業規則の変更があった場合、従業員に対して改訂された内容を周知することが非常に重要です。労働条件の変更に伴う就業規則の変更には、変更後の就業規則を従業員に対して「周知」する手続きが必要です。

労働基準法では、使用者は就業規則を作成し労働基準監督署に届け出るだけでなく、従業員に周知させることを義務付けしています。ここでの「周知」とは、従業員が就業規則の変更内容をいつでも知る状態にあることを指します。

具体的な「周知」の方法としては、施錠されていないキャビネット内に保管されているか、パソコン上でいつでも確認することができる方法があり、従業員がいつでも確認できる状態にあることが必要です。

 

従業員の同意をもらう

労働条件の変更においては、可能であれば従業員一人ひとりの同意を得ることが望ましいです。丁寧な説明と従業員との合意により、後々のトラブルの未然防止につながります。

労働条件の変更において、従業員が同意しないケースがあるかもしれません。就業規則を変更することによって、労働条件の不利益変更は可能になりますが、可能な限り従業員に対して丁寧な説明や対応を行い、従業員の同意を得ることは、後々の労働者のモチベーションにも影響が出ますし、トラブルの芽を摘むことにもなります。

従業員が変更内容を理解し納得した場合、変更に対する抵抗感や不満が軽減され、労働条件変更によるトラブルの発生を未然に防ぐことができます。従業員が労働条件の不利益変更に納得すれば、その後の職場の雰囲気やモチベーションの向上にもつながるでしょう。

労働条件の不利益変更に際しては、可能な限り従業員に対して丁寧な対応を行い、十分な説明を提供し同意を得ることが望ましいです。それにより、信頼関係の構築とトラブル予防につながるでしょう。