年次有給休暇とは、一定の条件を満たす労働者に対して支給される「有給」の休暇制度です。有給とは、つまり「給与が支払われる」ということを指しますので、有給休暇を取得した労働者にはその期間に対する給与が支払われます。
年次有給休暇は、毎年一定の日数が付与されるため「年次有給休暇」と呼ばれていますが、一般的には単に「有給休暇」または略して「有休」と呼ばれることが多いです。
年次有給休暇制度は労働基準法によって規定されているため、どの企業でも条件を満たす労働者には必ず付与しなければなりません。
有給休暇を取得することは、労働者の正当な権利になりますので、企業は労働者が不利になるような行為は禁じられています。
下記のような行為は禁じられています。
●有給休暇の取得理由によって、取得を拒否すること
●従業員が希望する日程での有給休暇を拒否すること
※但し、従業員の有給休暇取得によって事業の正常な運営が妨げられる場合、企業は「時季変更権」を行使して日程を変更することができます。
●有給休暇の取得によって給与や昇進において不利な扱いをすること。
有給休暇は、以下の2つの条件を満たす労働者に対して付与されます。雇用形態に関係なく適用されます。
●雇用期間が6ヶ月以上継続していること
●所定労働日数のうち8割以上出勤していること
所定労働日数とは、該当する労働者が通常勤務すべき日数を指します。例えば、ある企業のパート社員が週3日の勤務契約で入社したとします。このパート社員が6ヶ月以上継続して雇用され、週3日の労働日数に対して8割以上出勤している場合、半年後には有給休暇が5日付与されます。
有給休暇の具体的な付与日数は、継続勤務年数と1週間の所定労働日数によって以下のように定められています。
フルタイムで働く、週の所定労働時間が30時間以上、週の所定労働日数が5日以上の労働者、または1年間の所定労働日数が217日以上の労働者に対する有給休暇の付与日数は、次のようになります。
派遣社員や契約社員、準社員などでも週の所定労働日数が5日以上または週の所定労働時間が30時間以上であれば、同様の日数が付与されます。
フルタイムで働く正社員や契約社員などの労働者の有給休暇付与日数を計算する際は、所定労働日数の考慮は必要ありません。代わりに、出勤率の計算のみを行います。出勤率は、該当期間内の出勤日数を所定労働日数で割ることで算出できます。出勤日数÷所定労働日数の値が0.8以上であれば、勤続年数に基づいた有給休暇日数を付与します。
パートやアルバイトなど、週の所定労働日数が4日以下であり、かつ週の所定労働時間が30時間未満の労働者に対しても、同様に出勤日数÷所定労働日数の計算を行います。所定労働日数は、「該当のパート・アルバイト労働者が出勤すべき日数」とします。この計算結果が0.8以上であれば、勤続年数に基づいた有給休暇日数を付与します。
週5日以上働く労働者には、毎年10~20日の有給休暇が付与されます。
新たな有給休暇が付与された場合でも、既に使われていない有給休暇がある場合は、付与日から2年間はその有給休暇を利用することができます。企業側は繰越されるはずの有給休暇を無効にすることはできません。
2019年4月以降、企業は年に10日以上の有給休暇が与えられる労働者に対して、年間5日以上の有給休暇を取得させることが法的に義務づけられました。
有給休暇を取得していない労働者に対し、企業は労働者の取得希望日を尊重し、取得させる必要があります。ただし、労働者の意見を聞かずに、企業側から指定した時期に強制的に有給休暇を取得させることはできません。
有給休暇は、1日単位ではなく、半日単位や時間単位で取得することができる場合があります。ただし、半休や時間単位の有給休暇制度の有無は企業によって異なります。従って、半休や時間単位の有給休暇を取得するためには、該当の制度が企業に導入されている必要があります。
また、法律では半休に関する明確な規定はありませんので、半休の取り扱いについては各企業の就業規則によって自由に規定することができます。
一方、時間単位の有給休暇については、導入において下記のポイントがあります。
●導入には、労使協定を締結する。
●対象者、日数、1日に相当する時間数、時間単位以外の単位の取り扱いなどは、就業規則に明記する。
●時間単位の有給休暇は、5日間の有給休暇取得義務には含まれないため、別途5日間の有給休暇の取得が必要となる。
●年間で取得できる時間単位の有給休暇は、5日分以下とする。
労働基準法第39条には、有給休暇に関する規定が明記されています。
先述した有給休暇の付与義務や付与日数の規定、また年間10日以上有給休暇を付与した労働者に対しては5日以上の有給休暇を取得させる義務など、これらは全て労働基準法第39条に基づくものです。
規定に違反した場合の罰則は、年5日の有給休暇を取得させなかった場合には最大で30万円の罰金が科せられます。また、その他の労働基準法第39条の違反に対しては、使用者に対し最大で6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。