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安全配慮義務とは

労働者の安全と健康を守るための安全配慮義務は、雇用者に課せられた義務であり、労働契約法の第5条に規定されています。この義務により、従業員が安全で健康に働けるよう、雇用者は必要な配慮をしなければなりません。具体的には、従業員の労働災害の防止や「働きやすさ」の実現が必要です。

 

■労働契約法第5条

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

 

■労働安全衛生法第3条第1項

「事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。」

 

安全配慮義務は、直接的な労働契約を結んでいない従業員も含め、使用者が雇用するすべての従業員に対して適用されます。例えば、下請け企業の従業員、派遣社員、海外で業務を行う従業員なども対象となります。

 

厚生労働省の「令和3年労働災害発生状況」によると、労働災害による死亡者数・休業4日以上の死傷者数ともに前年に比べ増加に転じており、労働災害防止に対する対策が急がれています。

 

 

引用/厚生労働省サイト

 

安全配慮義務違反の罰則

労働契約法には罰則が規定されていないものの、安全配慮義務を怠った場合、民法第709条(不法行為責任)、民法第715条(使用者責任)、民法第415条(債務不履行)などを根拠に、使用者に多額の損害賠償を命じる判例が多数存在しています。このような判例は、安全配慮義務が労働者にとって非常に重要なものであることを示しています。企業が安全配慮義務を怠り、労働者に不利益をもたらす場合には、その企業が損害賠償責任を負うこととなります。そのため、企業側は安全配慮義務をしっかりと果たすことが求められます。

 

 

安全配慮義務に対する企業の主な対策

企業が安全配慮義務を果たすためには、作業環境の整備と労働者の健康管理が重要です。具体的な対策は、以下のようになります。

 

■作業環境の対策

事故や災害を予防するために、安全に配慮した作業環境を整備することが求められます。作業場所の設計や配置、安全対策の施設や設備の整備などが含まれます。使用する器具や機械は、安全基準に適合しているものを選定し、使用するようにしましょう。また、定期的なメンテナンスや点検を行い、故障や事故を未然に防止しましょう。

 

さらに、作業現場での危険な行動や不適切な作業方法を防止するため、適切な指導や教育を行うことが必要です。労働者に対し、安全に配慮した作業方法や、事故や災害の予防方法をきちんと指導しましょう。また、労働者からの意見や提案を受け付け、改善につなげることが大切です。これにより、労働者の安全意識を高め、職場環境を共に改善していくことができます。

 

■健康管理の対策

労働者の安全と健康を確保するためには、以下の対策が必要です。定期的な健康診断を実施し、労働者の健康状態を把握することが大切です。さらに、労働者に健康に関するアドバイスを提供し、健康管理に積極的に取り組めるように支援することも必要です。また、有害物質や化学物質が使用される場合には、その取り扱いについて労働者に十分な知識を提供し、安全な取り扱いを行うよう指導することが必要です。さらに、労働者の心身の健康を考慮し、適切な労働時間や休憩時間を確保することが大切です。ストレスや過労の原因となる作業環境や労働条件を改善することも重要です。

 

◆安全配慮義務を果たすための作業環境対応策の例

1.危険な機械、設備などについては、熟練した労働者のみに取り扱わせる。

2.機械や設備などの点検や安全確認を徹底する。

3.ハラスメントを防止するため、労働者向けの研修を定期的に行う。

4.労働者の就業状況を正確に把握し、長時間労働の抑制を図る。

 

◆労働者の健康管理に関する対応策の例

1.上司や人事部などを通じて労働者の生活状況をヒアリングする。

2.必要に応じて口頭で改善指導などを行う。

 

企業が積極的に労働者とコミュニケーションを図りながら、職場環境をしっかり管理することが必要です。特に労働者のメンタルヘルスに関しては、精神的なサポートが必要な場合があります。そのため、カウンセリングなどの専門家に相談できる窓口を設けることも重要です。

 

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