ワークシェアリングとは

ワークシェアリングとは、1人が担当している業務を複数人で分担する仕組みです。

その目的は、1人当たりの業務量を減らし、雇用の機会を増やすことにあります。

ワークシェアリングは、働き方改革の推進によって注目を集めています。働き方改革では、長時間労働の是正や柔軟な働き方の促進が重要視されており、ワークシェアリングはその有効な手段として注目されてきました。

実際、欧米では失業率の大幅な低下が報告されており、国内でもワークシェアリングを導入する企業が増えています。これにより、労働者の負担を軽減しながら雇用の増加が図られることが期待されています。

ワークシェアリングのメリット

◆企業側のメリット

・労働環境が改善される

ワークシェアリングにより、1人当たりの業務負担が軽減されます。業務を複数人で分担することで、労働時間や作業量が適切に調整され、従業員のストレスや過労のリスクが低減されます。労働環境の改善は、従業員の働きやすさや満足度を向上させる効果があります。

・生産性が向上する

ワークシェアリングにより、業務の効率化とタスクの分散が図られます。複数人で協力して仕事を進めることで、作業の効率が高まります。また、適切な役割分担や専門性の活用により、各人の得意分野での作業が増え、生産性が向上します。

・従業員のエンゲージメントが高まる

ワークシェアリングは従業員の参加意欲と関与度を高めます。業務の分担によって、従業員は自身のスキルや能力を活かす機会を得ることができます。自己成長や責任感の向上につながり、従業員のエンゲージメントが高まります。

・多様な人材を確保できる

ワークシェアリングは、多様な人材を活用する機会を提供します。複数人で業務を分担することで、異なるバックグラウンドやスキルを持つ人材を組み合わせることができます。多様な視点やアイデアが生まれ、企業のイノベーション力や競争力を高めることができます。

・企業イメージが向上する

ワークシェアリングの導入は、企業の社会的責任としての姿勢を示すことができます。従業員の働き方改革や雇用の促進に取り組んでいる企業として認知されることで、社会的な信頼性や評価が高まります。

また、従業員がより充実した働き方を実現できることから、人材の採用や定着率の向上にもつながります。これにより、企業の魅力や競争力が高まり、優秀な人材の獲得や顧客からの支持を得ることができます。企業イメージの向上は、ブランド価値の向上や持続的な成長に寄与します。

◆労働者側のメリット

・雇用が維持される

ワークシェアリングは、1人で担当していた業務を複数人で分け合うことで、労働者の雇用を維持することができます。業務を効率的に分担することで、仕事の負担を均等に分散させることができ、単一の労働者にかかる負荷を軽減します。これにより、企業が経済的な変化や困難な状況に直面しても、雇用を維持しやすくなります。

・新しい仕事に就きやすくなる

ワークシェアリングは、新たな雇用機会を創出します。1つの業務を複数の労働者が分担することで、それぞれのスキルや能力を生かすことができます。また、仕事の負担が軽減されることで、労働者は新たな仕事やプロジェクトに参加しやすくなります。ワークシェアリングは労働者にとって、キャリアの発展やスキルの磨きにもつながる機会を提供します。

・ワークライフバランスが保てる

ワークシェアリングにより、労働者は労働時間やスケジュールを柔軟に調整することができます。業務を複数人で分け合うことで、労働時間の調整や休暇の取得がしやすくなります。これにより、労働者は仕事とプライベートの両方を充実させることができ、ワークライフバランスを保つことができます。

・モチベーションが向上する

ワークシェアリングにより、労働者は業務を共有し、協力して取り組むことができます。仕事の負荷が分散されることで、労働者はより充実感を得ることができ、モチベーションが向上します。また、他の労働者とのコミュニケーションや協力を通じて、チームワークやスキルの向上も促されます。ワークシェアリングは労働者の働きがいや意欲を高める要素を提供し、生産性や満足度の向上も期待できます。

ワークシェアリングのデメリット

◆企業側のデメリット

・従来の制度を見直す必要がある

ワークシェアリングを導入する場合、従来の業務や労働環境の制度を見直す必要があります。業務の分担や役割の再設定、労働時間の調整など、組織の慣行やルールを変更する必要が生じます。これにより、変革の適用や社内コミュニケーションの改善など、組織全体での調整と調整の手間が発生する可能性があります。

・引き継ぎや研修が必要

ワークシェアリングでは、業務の分担や役割の変更が行われます。新たなメンバーが加わる場合や業務の引き継ぎが必要な場合、適切な引き継ぎ手続きや研修が必要です。業務の移行や情報の共有を円滑に行うために、時間やリソースを投入する必要があります。

・給与計算に手間と時間がかかる

ワークシェアリングでは、複数の労働者が業務に関与するため、給与計算や労働条件の管理が複雑化する場合があります。労働時間や役割の違い、報酬体系の変更などが発生するため、給与計算において手間や時間がかかる可能性があります。給与システムの見直しや労務管理の強化が求められることもあります。

・一部のコストが増加する

ワークシェアリングの導入には、一部のコストが増加する場合があります。例えば、業務の引き継ぎや研修のための費用、労働条件の調整や報酬の見直しに伴う費用、情報共有やコミュニケーションのためのITシステムの導入などが該当します。これらの追加コストを考慮する必要があります。ただし、結果として生じる生産性や労働環境の改善によって、総合的な効果が得られる場合もあります。

◆労働者側のデメリット

・収入が減る

ワークシェアリングでは、1人で担当していた業務が複数人で分担されるため、個々の労働者の担当業務量が減少する場合があります。その結果、労働者の収入に影響が生じる可能性があります。

・職種間で格差が生まれる

ワークシェアリングでは、担当業務が複数の労働者で共有されるため、職種間での業務内容や責任の差が生じることがあります。特定の職種やポジションにおいては、業務の一部が他の労働者によって分担されることで、個々の役割や貢献度に差が生じる可能性があります。これにより、職種間での格差や評価の差が生じる可能性があります。

またワークシェアリングできる職種とできない職種もあり、職種間で賃金格差が生じる可能性もあります。

ワークシェアリング導入の流れ

Step1.現状の把握

ワークシェアリングを導入する前に、現在の業務状況を把握する必要があります。どの業務が存在し、どのような形で担当されているかを明確にしましょう。関与する従業員の数や業務の負荷、時間やコストの情報を整理します。

Step2.ワークシェアリングの選定

ワークシェアリングを適用する業務や職種を選定します。複数の従業員が協力して業務を遂行することが効果的な業務や、均一化された業務などが適しています。選定基準は、業務の性質や目的、労働環境の改善効果などに基づいて考慮しましょう。

Step3.業務のマニュアル化

ワークシェアリングを実現するためには、業務のマニュアル化が重要です。ワークシェアリングに参加する従業員が適切に業務を行うために必要な手順や情報を明確にまとめ、マニュアルを作成します。マニュアルには業務の詳細な手順や役割分担、連絡方法などを含め、従業員が必要な情報を網羅的に提供します。

Step4.導入後の定期的な確認と改善

ワークシェアリングの導入後は、定期的な確認と改善が必要です。業務の進捗や効果を定期的に評価し、運用上の問題や改善点を把握します。従業員のフィードバックを収集し、効果的なワークシェアリング環境を維持・改善するための措置を講じます。定期的な振り返りを通じて、ワークシェアリングの効果を最大限に引き出すための仕組みを構築していきましょう。

ワークシェアリングは、従業員の労働時間の削減や生産性の向上など、多くのメリットがある一方で、従業員間のスキルマッチングやコミュニケーション、生産性低下などの課題も存在します。

企業は、ワークシェアリングを導入する際には、従業員の立場や環境に配慮し適切な支援を行うことが重要です。そのような取り組みにより、企業と従業員の両方にとって、より良い労働環境が実現されることでしょう。