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未払い残業を発生させない労務管理体制

「未払い残業代」とは、1日8時間や1週間40時間を超える労働時間に対して支払われるべき時間外割増賃金のことで、まだ支払われていない残業代のことです。

残業代は、労働基準法によって企業が従業員に支払うことが定められています。この規定は企業の規模や従業員の雇用形態に関係なく適用され、残業代が支払われなかった場合は従業員は企業に対して支払いを請求することができます。

監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)」によると、是正企業数は1,069企業で、そのうち115企業が1,000万円以上の未払い残業代を支払う結果となっています。

グラフ

 

引用/「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)

 

サービス残業による未払い賃金請求は、労働基準法違反に該当し、企業にとって大きなリスクとなります。労働基準監督署からの是正勧告や課徴金の支払い、さらには労働者からの損害賠償請求などのリスクがあり、経営に悪影響を及ぼす可能性があります。また、企業の社会的信頼度が低下し、従業員の離職率の上昇なども起こり得ると言えるでしょう。

 

支払う金額は未払い残業代のほかにも発生します

未払い残業代を請求された場合、残業代のほかに支払うべき金額として、遅延利息があります。

未払い残業代の遅延利息は、未払いの残業代が支払われるべき期日を過ぎている場合に発生する利息のことを指します。遅延利息は、未払いの金額に対して一定の利率が適用され、遅延期間に応じて計算されます。

労働者が正当な権利として主張する未払いの残業代が遅延して支払われる場合、その遅延によって労働者は損失や不利益を被る可能性があります。遅延利息は、この損失や不利益を一定の金銭的な補償として労働者に支払うための仕組みです。

残業代の支払いを行わなかった雇用主に対して、未払い残業代と同額の金額の支払いを命じられる付加金というものもあります。

付加金は、労働者の保護から、支払い義務を果たさない雇用主に制裁を与える意味で経済的な損失を与え、労働者に生じる損害を補償するものです。

 

サービス残業が発生するのはなぜか

サービス残業は、従業員が法定労働時間外に働いたにもかかわらず、それに見合った賃金を支払わない残業のことを指します。このような残業は「賃金不払残業」とも呼ばれ、会社が強制する場合だけでなく、意図せずに支払いを怠った場合でも労働基準法違反となります。

サービス残業が発生する要因はなんでしょうか。

業務量の増加

業務量が増えると、通常の労働時間内にすべての仕事を完了することが困難になります。これにより、業務の遂行に必要な時間を削減するために、従業員はサービス残業を余儀なくされることがあります。

業務量の増加への対応として、業務の効率性を高めるために、適切な時間管理、仕事の優先順位の設定、そして労働者の適切な配置が必要です。

プレッシャーとストレス

組織内でのプレッシャーとストレスは、サービス残業が発生する原因となります。

従業員は、プレッシャーにさらされると、通常の労働時間内に業務を完了することができず、サービス残業を余儀なくされることがあります。また、ストレスは、作業効率を低下させるだけでなく、作業ミスや職務不適合につながる可能性もあります。このため、企業はストレスを軽減するために、労働者の健康や福利厚生そして労働条件を改善することが重要です。

 

企業文化や風土

サービス残業は、組織内の文化や風土が原因となる場合があります。

従業員が長時間働くことが当たり前であると認識されている場合、サービス残業が当たり前のように発生し、それが従業員に負担をかけることがあります。また、組織内でのコミュニケーションやフィードバックが不十分な場合、従業員は、作業効率を高めるためにサービス残業を余儀なくされる場合があります。このため、組織は、従業員とのコミュニケーションを改善し、従業員が適正に働ける労働環境作りに努める必要があります。

 

未払い残業が発生しない、残業を発生させないしくみづくりが重要です

未払い残業は労働者にとってストレスや健康問題の原因となり、企業にとっても法的な問題や生産性低下の原因となります。

以下に、未払い残業が発生しない、残業を発生させないしくみづくりの主な取り組みをご紹介します。

 

残業に対する意識の改革

残業に対する意識改革とは、企業や労働者の働き方に関する意識の変革を促すことで、残業時間を減らし、健康的な働き方やワーク・ライフ・バランスの実現を目指す取り組みのことです。

従来の仕事のやり方で残業を削減しようとすると、家に持って帰って仕事をするなどサービス残業が発生したり、単純に仕事を翌日に行うなど、本来の目的を見失ってしまうおそれがあります。

企業側は、「業務の適切な分担」「従業員の状況の定期的な把握」「帰りやすい雰囲気」など、従業員が働きやすい環境を作るための意識改革を行う必要があります。

従業員に対して残業を奨励しないことを明確に伝え、定時での帰宅を徹底します。また、無駄な残業が評価に影響することをミーティングや面談の場で周知することも重要です。

なかには、これまでの仕事のやり方を変えられない従業員もいます。無駄な残業を繰り返してしまう社員に対しては、仕事のやり方を指導したり、会社の考えを伝えたりする必要があります。

 

労働時間制度や管理体制の見直し

労働時間制度や管理体制の見直しには、従業員の健康や生産性の向上、企業の競争力の強化など様々なメリットがあります。以下に具体的な取り組みをいくつか挙げて説明します。

 

●フレックスタイム制度の導入

フレックスタイム制度とは、従業員が始業・終業時間を柔軟に調整することができる制度です。従業員が自分のライフスタイルに合わせて労働時間を調整できるため、ワークライフバランスの向上や通勤時間の短縮が可能になります。また、時間帯によっては生産性が上がる場合もあるため、企業にとってもメリットがあります。

 

●リモートワークの導入

新型コロナウイルス感染症の影響で、リモートワークが一般化しました。リモートワークは、従業員が自宅やカフェなど場所を選ばずに働けるため、通勤時間の短縮やコミュニケーションの効率化が可能になります。企業もオフィススペースや光熱費の削減ができるため、コスト削減にもつながります。

 

●タスクマネジメントツールの導入

タスクマネジメントツールとは、業務の進捗状況を管理するためのツールです。従業員がどのタスクに取り組んでいるのかを一覧できるため、管理者はタスクの優先度を付けたり、進捗状況を確認することができます。これにより、業務の効率化が図れます。

 

●プロジェクトマネジメントの導入

プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの全体的な進捗状況を管理するための手法です。プロジェクトにおけるスケジュールやリソースの最適化が可能になるため、プロジェクトの成功確率を高めることができます。

 

生産性の向上

生産性の向上は企業にとって極めて重要です。生産性を向上させることで、コスト削減、競争力強化、品質向上、社員モチベーション向上などの効果が得られます。生産性の向上に有効的な取り組みは以下のようなものがあります。

 

●業務プロセスの見直し

業務プロセスを見直し、無駄な作業や手順を改善することで、生産性を向上させることができます。例えば、業務フローの改善や自動化の導入、業務マニュアルの整備などが挙げられます。

 

●最新テクノロジーの導入

最新のテクノロジーを導入することで、業務の効率化や品質向上を実現し、生産性を向上させることができます。例えば、ビッグデータ分析、人工知能やロボットの導入、クラウドコンピューティング、IoTの活用などが挙げられます。

 

●社員の能力向上

社員の能力向上に取り組むことで、生産性の向上につながります。例えば、社員研修やトレーニングの実施、スキルアップ支援の提供、新しい技術や知識の学習の機会の提供などが挙げられます。

 

●コミュニケーションの改善

コミュニケーションの改善により、情報共有や意思決定の迅速化ができ、生産性の向上につながります。例えば、チームミーティングや報告会の定期的な開催、コミュニケーションツールの導入、マネジャーとの個別面談などが挙げられます。

 

 


未払い残業は、労働者の権利を侵害し、健康や生産性の低下などの問題を引き起こすことがあるため、未払い残業を発生させないしくみづくりがとても重要になります。

 

未払い残業を発生させない労務管理体制