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2025年4月に施行される育児・介護休業法の改正は、すべての企業、特に中小企業にとって実務的な影響が大きい内容となっています。本記事では、今回の法改正の背景や内容を詳しく解説し、企業としてどのように対応していくべきかをわかりやすくまとめました。
少子高齢化が進む中、育児と仕事、介護と仕事の両立を支援するための制度強化が求められています。従来の制度では対応しきれなかった家庭環境への配慮や、働き方の多様化を背景に、今回の改正が行われました。
主な背景は以下の通りです。
・育児・介護による離職防止
・女性の継続就業率向上
・テレワークや時差出勤など柔軟な働き方への制度対応
・企業の労働環境整備の義務化
従来:「3歳未満の子を養育する労働者」 改正後:「小学校就学前の子を養育する労働者」
これにより、より多くの労働者が所定外労働の免除を申し出ることが可能になります。企業は労働時間の管理体制の見直しとともに、就業規則の整備が求められます。
従来:短時間勤務や時差出勤などが中心 改正後:テレワーク等も選択肢に追加
テレワークの導入が進む中、法制度上もその位置づけが明確化されました。企業は育児・介護に対応したテレワーク制度の構築が必要になります。
企業は介護に直面した労働者に対し、制度の案内や今後の希望を確認することが義務になります。また、介護制度の利用促進を目的とした職場環境の整備も求められます。
対応のポイント:
・対象となる労働者の確認(就学前の子を持つ従業員)
・労働時間管理の再設計
・代替要員や業務分担の調整
・労使協定の見直し
・就業規則・社内規程の変更
実務上の注意点:
・一律の対応ではなく、個別事情に配慮した対応が重要
・他の従業員との不公平感を防ぐための説明も必要
対応のポイント:
・育児・介護目的のテレワーク制度の明文化
・就業規則や労使協定への明記
・労働時間の可視化と業務成果の見える化
・セキュリティ対策と業務遂行ルールの整備
実務上の注意点:
・通信費や備品負担などの費用精算ルールの明確化
・業務遂行評価の基準作成
・対象業務の明確化
対応のポイント:
・介護制度の社内説明資料の整備
・介護休業取得の手続きマニュアル化
・個別周知のための面談やヒアリングの体制整備
・管理職への研修実施
実務上の注意点:
・プライバシーへの配慮
・介護対象家族の範囲と制度の利用要件の周知
・制度利用者の不利益取り扱い禁止への徹底
就業規則の改定は単なる「記載追加」ではなく、実運用に即した内容でなければなりません。
主な改定項目例:
・所定外労働の制限対象の変更
・短時間勤務・代替措置にテレワークを含める条文の追加
・介護制度に関する周知義務や意向確認に関する記載
・テレワーク制度全般の整備(勤務時間、労災、費用負担など)
改定時のポイント:
・労働者代表との協議と意見聴取
・改定後の周知義務(紙面または電子)
・規程の運用方針やQ&Aの作成
制度改正は書類対応だけでは不十分です。運用現場に理解と納得がなければ、制度は形骸化します。
研修で伝えるべき内容例:
・制度の内容と背景(法改正の目的)
・対象者がどのような支援を受けられるか
・管理職としての対応義務と配慮ポイント
・テレワークや介護制度利用時の対応フロー
研修の方法:
・社内集合研修(管理職対象)
・オンライン研修+録画配信
・Eラーニング教材の活用
よくあるトラブル例:
・対象者からの申出を拒否してしまった
・テレワーク申請を曖昧な理由で却下した
・制度利用後の評価や処遇でトラブル発生
防止策:
・制度に関する明確な判断基準を文書化する
・対応記録を残す(申出、面談内容、通知)
・担当者教育を実施し、人為的ミスを防ぐ
法改正対応は自社だけで対応するには限界があります。特に中小企業ではリソース不足やノウハウ不足が問題になりがちです。
社労士に依頼するメリット:
・法改正のポイント整理と実務対応支援
・規程改定の文案作成とリーガルチェック
・社内説明資料やマニュアルの作成
・労働者代表との調整支援
・労基署への届出書類作成
FUJI社会保険労務士法人では、最新法改正に即した就業規則の見直しから、現場運用まで一貫したサポートを提供しています。
今回の育児・介護休業法の改正は、「義務」ではなく「成長への投資」として捉える視点が重要です。柔軟な働き方を支援する制度を整えることは、従業員満足度の向上、定着率の改善、生産性向上につながります。
社労士との連携を通じて、制度改正を企業成長のチャンスに変えていきましょう。